2012年02月27日

別れの美学

僕のお気に入りの詩人、ひろはまかずとしさんの詩集の中に、こんな詩がありました。

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何かを持ったまま握りしめたこぶしでは、他の何もつかむことはできません。
出会いに別れが必要なのも、それと同じことなんです。出会いが、神様のくださる奇跡ならば、別れもまた新しいものに出会うための神様の贈り物です。
出会いに感謝するように、別れにもきちんと感謝をしたいと思うんです。
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この別れとは、家族であったり、恋人であったり、様々だと思います。

出会いがあれば、そこにはいつか必ず別れが訪れる。
そういった人との別れの中で、僕には忘れられない人との別れがあります。

もう15年近く前になりますが、僕が大学生だった頃、僕は接客業のアルバイトをしていました。

その頃の店長のKさんにはいろいろなことを教わりましたが、当時の生意気な僕のような若者に対し、本当に辛抱強く接してくださったなと今でも感謝しています。

そんなKさんから教わり、今でも心がけていることが2つあります。

1つは、僕がお店のことでKさんに不満を言った時に言われたことです。

僕の不満に対し、「ではお前はどうすればいいと思う?」とKさんは言いました。

そして「何かに対して不満を言うのであれば、それに対してどうすると改善ができるかなどの提案も一緒にしなければいけない。でなければそれはただの文句だ。」と続けました。

ただ不満を言うのは誰にでも出来る。しかし不満を言ったところで問題は解決しないのです。
もし意見を言うのであれば、不満だけではなく提案もつける。

それ以降僕は何かに対して意見を言う時には、きちんと提案もつけることにしています。

それともう一つは、僕がKさんから頼まれた作業に対して言われたことです。

「作業の進め方にはいくつかやり方がある。一番いいのは当然ながら『早くて正確』なこと。でも次にいいのは『早くて雑』ではなくて『ゆっくりでも正確』なこと。急いでやろうとして雑になるようであれば、時間がかかってもいいから正確に進めてください。」

このことは、仕事や作業のことだけではなく、世の中の多くのことに当てはまることだと思います。
なので僕は今でも、このことを念頭に物事を進めています。

あれから15年が経ち、その間にもいろんな経験をし、いろんな人たちと出会ってきました。
その中で、僕より先輩でもあるのに上記のことが身に付いてなく、それらが出来ない人たちとも残念ながら多く出会いました。

その人たちを非難するつもりは全然ありません。僕だってあの頃にKさんと出会わなければ、そんなことも知らず、実行も出来ずに今に至っていただろうと思うからです。

だから本当に、僕はKさんに出会え、そしてそのことを教えていただいたことに、感謝をしています。

そんなKさんが当時出世をされ、お店から移動となった時、お別れの会の後、僕と同僚の2人が、最後に荷物をKさんの車まで運ぶのを手伝わされました。
もちろん僕は嫌々運ぶのではなく、最後のお手伝いだと感謝の気持ちで手伝ったのですが、その荷物を車に積み込み、お別れをしようとした時、なんとKさんは僕と同僚に、車の中からプレゼントを出してきたのです。
Kさんはそのために僕と同僚に荷物運びを手伝わせたのですが、全く予想していなかったその行動に僕らは驚き、そして本当に嬉しく思い涙したのを今でも覚えています。

ちなみに僕へのプレゼントは、クリーム色のネクタイ。「お前は色が黒いから、こういう色がいいんだ。」と。

そのネクタイは、15年経った今でも僕のクローゼットにかかっています。

人間の行動は、常に経験によって作られるものだと思います。
立派な大人、かっこいい大人の行動が出来るようになるのも、いかに若い時にそういった先輩に出会えたによると僕は感じています。

別れ方にも美学がある。そんなことを、僕はKさんから教わりました。
posted by Coyama at 23:35| 思ったこと・感じたこと