2012年01月27日

頑張らなくていい

昨日から朝起きると喉が痛く、どうやら風邪をひきかけているようです。今日は外出の予定を取りやめ、自宅作業に切り替えて養生することにしました。

思い返すと、先日電車の隣の席の人が風邪をひいているようだったり、参加した勉強会で隣に座っていた方がゴホゴホやっていたりなど、風邪をひくにはいくらか心あたりがあります。

そういえばその勉強会で隣に座っていた方は、最初からマスクをしていました。
最初の頃は普通だったものの、しばらくすると鼻をすするようになり、やがてゴホゴホと咳をするようになりました。
僕は隣に座っていたので気がついていましたが、勉強会を邪魔しないよう小さく咳をされていたので、周りはあまり気にはしていなかったと思います。

やがて限界が来たのか、隣の席にいた同僚の方にメモを渡してアイコンタクトをし、その方は途中で退席していかれました。

ただ席を立った後、その方はクロークルームや部屋の入り口で、今度は皆に聞こえるよう大きく咳をされていました。
明らかに風邪をひいているとわかる、あのガラガラとした嫌な咳です。さっきまでこっそりと我慢をしていたのに、なぜそこで?と思いました。

その方はお若く、またその日の勉強会はその業界の方々が「神様」と崇める方が主催の勉強会でしたので、途中退席することに気が引けたのでしょう。その大きな咳には「体調が悪いから帰ります。本当に申し訳ありません。」という言い訳を知っていただきたいと言う気持ちが現れていたように感じられました。
ただ、その咳を聞いた会場にいる多くの方は快くは思わなかったでしょうし、「いいから早く帰って休みなさいよ」と思った人もいたと思います。そういった感じの、少々しつこい咳でした。

その方に限らず、体調が悪いのを押してまで仕事や人の集まる場に参加をする人を時々見かけます。
一方で開催する立場の時に、直前になって体調不良のため欠席しますと連絡を受けることもあります。
ご本人がその場で重要な位置を担わない場合には、正しい判断は後者だと、僕は思っています。

きっと当事者からしてみると外したくない予定なのかもしれませんが、周囲の方に迷惑をかけるということも考慮しなければいけないと思います。
仕事でどうしても外せない打ち合わせなどのやむを得ない場合もあると思いますが、それ以外で、今でなくてよいものは、極力体を休ませても良いのではないでしょうか。

何事も体が資本です。僕は大学・大学院の恩師からは、建築家としての重要な条件は『健康第一』と教わりました。
以来体調管理には常に気を使うようにしています。

もちろん自身の不摂生でなくても、子どもが幼稚園や学校で風邪をうつされ、家庭の中で親がうつされるということもあると思います。
だから風邪を引くことや、無理をしてでも話を聞きに行きたいという熱意を否定する気は僕にはありません。

ただ、具合の悪い時には休む。そんな“いい加減さ”も持ち合わせてもよいのではないかな、と僕は今の日本人に対して思うわけです。
多くの人は、“自分は頑張っている”ということを周りにアピールしたがる傾向にあるように感じています。

そうは言っても僕も以前は似たようなことをよくしていました。
しかし20歳の頃、バイト先で不満に思うことがあり「自分はこんなに頑張っているのに!」と言ったところ、上司から「それは自分が決めることではなく人が決めることだ。」と諭されたことがあります。確かにその通りだと思います。
それ以来、僕は自分に対して「頑張る」と言う言葉を使うことをやめました。

また大学院の時に、恩師の部屋で対話をしていると、学生が一人訪ねてきました。
彼は作業の確認に来たのですが、最後に恩師が声をかけたところ、彼は「はい、頑張ります!」と答えました。
すると恩師は彼に向かって「頑張らなくていいから、しっかりやりなさいよ。」と返したのです。

学生が帰った後、恩師は僕にその言葉の真意を教えてくれました。
『これまで何十年も学生を指導して来たが、皆口々に「頑張ります」とか「頑張っています」と言う。しかし「頑張る」という言葉には「頑を張る」「他人を押しのけてでも前に出る」という意味がある。だから僕は学生には「しっかりやりなさいよ」と声をかけるんだよ』と。
それ以来、僕は他人に対しても「頑張る」「頑張れ」という言葉を使うことをやめました。

デンマークにいた頃、何人かの方から同じようなことを言われたことがあります。
『あなたが懸命に生きていることは見ていてわかります。だから「頑張ってください」とは言えません。懸命に生きている人に対して、頑張ってと言うのは酷なこと。本人はこれ以上頑張りようがないわけですからね。』と。

だから僕は今では「頑張る」という言葉を、自分に対しても他人に対してもほとんど使いません。

東日本大震災で被災された方々への言葉にも、僕はそれがあると思っています。
僕は決して被災者の方々に「頑張ってください」とは言えません。

ではなんと声をかければよいのか。
その答えの一つを、最近知りました。
天皇皇后両陛下が被災地を訪れたとき、美智子妃は被災者の方々の手をとって、こんなお言葉をかけられていました。

『本当に、生きていてくださって、ありがとう。』

見習いたいと思います。自分もそのような言葉を自然に発することが出来るよう、これからもしっかりとやっていきたいと思っています。
posted by Coyama at 21:41| 思ったこと・感じたこと