2012年02月01日

なりたくないもの・なりたいもの

先日読んだ本の中に『学識者はよく、現代はモデル不在の社会であると指摘します。こういう人になりたい、こんなふうに成功したい、そんな人生の目標になるような対象が、いつの間にか社会から消えているわけです。』 という記載があり、妙に納得をしました。確かに、今の時代には憧れるような人物が少ないように思えます。

その一方で、こうはなりたくないなと思う人たちはたくさんいるように思えてなりません。

そう考えたとき、ある方とお会いした時のことが僕の頭に浮かびました。

7年前にデンマークから帰国した時、僕は自分が学んできたことや見てきたことを文章に残したくて、周囲の人に相談をしたところある会社の社長さんを紹介していただきました。
その紹介者の方に連れられて社長さんに会いにいくと、まずは紹介者の方が一通り僕のことを話して紹介をしてくださいました。
すると社長さんはその僕の紹介を聞いて急に思い出したらしく「あぁ、君かぁ!、君のことは知ってる。〇〇さんや〇〇さんからも薦められたんだよ。でも僕から声をかけるわけにはいかないからね、来るのを待っていたんだ。」と言われました。

その後、今度は僕の口から自分のやってきたことや求めていること、やりたいこと、出したい本の内容などを一通り話すと、その社長さんは僕の目を見て「君は完璧すぎて気に食わない。」と言われました。
そして内容によっては本を出させてあげるが、まずはどんな文章を書くのかを知りたいので、とりあえずメールでよいのでこれまで書いたものを送るようにと言われ、その会合は終わりました。

そして数日のうちにいくつか書いた文章をまとめて、社長さんからいただいた名刺に書かれていたアドレスにメールを送ったのですが、その後返答はありませんでした。もしかしたらアドレスを間違えていて送れていなかったのかもしれないと思い、数日後に名刺に書かれていたアドレスを再度確認してもう一度送ってみましたが、その後も返事は来ませんでした。

それから半年ぐらいして、あるシンポジウムの会場でその社長さんに偶然お会いしました。
その時にメールを送った話などもしたのですが、その返答は「そうだっけ?」と素っ気ないもので、すぐに話が変わり「そういえば君は今何をしているんだっけ?」と聞かれたので「大学の研究室にいます」と答えたら「そうなんだぁ。また今度話を聞かせてよ。」と言われました。前回お会いした時にもその話をしたのですが、まったく覚えてはいないようでした。

以来、その社長さんとは関わりはありません。
そしてこのような社長さんが携わる本ではよい本にはならないだろうと思い、本を出版することは一旦諦めました。

もちろんこのことは僕からの視点ですので、その社長さんから見るとそれなりの理由があったのかもしれません。僕自身もそれほど品行方正な若者でもありませんでしたし。
それに例え失礼があったとしても、もし僕が提案した内容や送った文章などに惹かれるものがあれば、出版の話に繋がっていたと思います。
そうならなかったのは、単に自分に実力がなかっただけのことです。

きっと本は出すべき時に出せる時が来る。まだその時期ではないし、自分にも実力が足りないと思い、焦らずにより経験と勉強を重ねることにしました。
今思うと、やはり当時の未熟なままの状態で本を出さなくてよかったと思いますし、もしかするとそんなところもあの社長さんは見抜いていたのかもしれません。

ただ、一人の大人として、年長の人間として、その社長さんが取られた行動は、いかがなものかとも思っています。

・自分よりも目下の人間に自ら声をかけるようなことはしない
・若者に対して「君は気に食わない」と切り捨てる
・送るように言って送られてきたメールに、いいとも悪いとも、何も返答をしない
・半年前に会って話したことを覚えていない

こういう大人にはなりたくないな、と思いましたし、今でもそう思っています。
現在自分も会社を作ってしまい社会的には社長という立場になったわけですが、僕はあのような社長にはならないように気をつけたいと常々思っています。

・たとえそれが目下であろうが年下であろうが、何かあれば自ら声をかけてみる
・未来ある若者の芽を摘むような発言は慎む
・いただいたメールに対しては、どんなにやることに追われていたとしても、1言でもいいから返信するようにする
・人と話したことはなるべく覚えておくようにする。少なくともいくつかの情報はメモなどをして覚えておくようにする。

そう自分が心がけられるようになっているという意味では、あの時あの社長さんにお会いしてお話しできたことは僕にとってはよかったことなのだろうな、と思っています。

そして自分は恥ずかしい大人にはならないよう、明日もしっかりとやっていきたいと思っています。
posted by Coyama at 23:44| 思ったこと・感じたこと